令和5年 春彼岸【臨時】お寺豆知識

「寺(てら)」という漢字
 不思議にお思いになられませんか?お寺という文字を普段何気に使用しておりますが、土の下に寸と書き、合わせて寺と読みます。土に寸という漢字がどのような理由があり、それがなぜお寺となったのか、ちょっと気になり調べてみました。
 寺の漢字を分解致した、土という漢字は小学1年生で習い、寸は小学6年生で習う漢字だそうです。そして寸は小学6年生で習うのに、土と寸が合体した寺という漢字は小学2年生で習うとのことです。そして、私どもが日常で使う漢字の寸は、昔の長さの単位と認識しております。「一寸先は闇」、「一寸法師」など、何センチとまでは正確な数字はわからないものの、短い長さだということまでは理解しておりました。
 尺貫法という昔の長さの測り方を調べてみますと、1寸は1尺の10分の1で、約3.03センチという長さだそうです。そして寸という文字の形は、原型は象形文字で、手を当てて物の長短を測る様を表しているようです。手で測れるほど長くないという短さから「みじかい」という意味になったようですが、ならば短い土で寺というのも疑問が残ります。
 そこで更に漢字の歴史を調べてみますと、寸が短いという意味合いがもたらされたのは比較的歴史の浅いことで、本来は手という意味が強いようです。そして土は、地面の土、土砂という意味となったのも歴史の浅いことで、本来は植物の目の発芽を表しているとのことです。手で植物の発芽を促す様子から、農耕を意味し、同じ所に留まることをも意味するようになりました。
 そして意味が毎年繰り返される永住農耕が転じていき、永遠の働きを表すようになりました。その後、永遠の働きから永遠の精神の意味が強まり、古代中国では皇帝に忠誠を誓う官吏(かんり)という中国の役人を待機させた建物を意味するようになりました。忠誠心の恒久性とじっと待機させる拘束性が、寺という漢字を作り上げたのです。
 当時の意味の寺は役人の待機場所ですから、役場や官庁という仕事の建物だけを示しておりました。それが時を経て仏教の宗教施設の意味を深めたのは、漢の時代に西域から来た僧を鴻臚寺という接待所に泊めたことに由来するとのことです。その後、日本に中国から漢字や仏教が伝わるときは、仏教寺院としての意味合いの文字として寺は使われていました。
 歴史が違い、漢の時代に僧侶が宿泊せずに画家が宿泊していたら、寺は美術館や画廊、の意味になったかもしれませんし、医者が宿泊していたら病院を示していたかもしれません。誠に面白いものでございます。

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