得度式
残暑お見舞い申し上げます
今年の夏は、節電のため、日中のエアコンをつけずに過ごしましたが、意外にも人間は慣れる様で、汗をかくことも苦にはなりませんでした。むしろ、時折入るそよ風に涼を感じ、自然の本来の営みをゆっくりと感じることができました。
これが出来た心理背景には、やはり東日本大震災の被災地の皆様のことを思い、この現状生活が贅沢なことで、少々の暑さでさえ、被災地の皆様に比べると、我慢の領域に入らないと自身が理解しているからです。
誰もが当たり前に思っていることが、震災という出来事から、今の環境を再度見渡し、比較で自身のおごりを知る結果になりました。
確かに、三月の東日本大震災が忘れかけていた日本人の本来の心を目覚めさせ、人々に何か見えない精神成長をもたらしたように思えます。
そして、その翌月四月に、法然上人八百年御遠忌を迎えました。もし、震災がなければ、八百年忌祥当の妙境に誰もが至福の仏縁に感謝していただけでしょう。
それが苦縁を伴い、この八百年御遠忌を営んでみると、八百年という法然上人の遺徳を偲ぶだけではなく、むしろ既に将来の苦難を法然上人は予測されていて、人間の力ではどうすることもできない目の前の現状は、逃れることの出来ない事態だと今の我々に語りかけておられるように思えます。
そして、苦縁でさえ心に受け入れ、生きていく糧に真の仏心を持ち、お念仏する力が大切だと改めて知らしめて下さっているように思えてならないのです。それが法然上人の人々を救い続けてこられた本願だと重く心に刻み、忘れることの出来ない平成二十三年となりました。
更にまた、泉福寺では、次男が十歳を迎え、長男・弘円と次男・眞之介二人が、本年七月に総本山・光明寺に於きまして、得度式を授戒させて頂きました。東日本大震災、法然上人八百年御遠忌、そして泉福寺子弟の得度式と縁深き節目の年となったのでございます。
得度式とは、仏門に入り一生の修行を阿弥陀様に誓い、それを認められて僧名を頂く儀式でございます。長男、次男二人が本山管長により僧名を賜ってまいりました。
これは、泉福寺の継承者の本山承認であり、檀信徒皆様にご報告せねばならず、本号九月「いずみ」は、子供たちの得度式ご報告の号とさせて頂き、この「いずみ」に掲載することで、子供たちにも仏門の自覚を諭さねばなりません。
つきましては、本来ならば、檀信徒皆様をお招きし、お披露目式を催さないといけない運びではございますが、勝手ながら本号掲載にてご報告申し上げ、皆様にお披露目とする略儀をお許し下さればと存じます。今後とも、愚僧だけでなく、子弟共々ご指導賜りますよう伏してお願い申し上げます。 合掌