泉輪 令和7年11月



離合って知っていますか?


思い出すだけでも汗を呼びそうな今年の極暑も成りを潜め、ようやく秋の訪れが参りました。暑さ寒さも彼岸までの言葉のように、普通なら九月で陰りを見せるはずの季節の移り変わりは、十月まで熱気を引きずり、そのうち言葉も、暑さ寒さも十夜までと変わっていく気配を感じる今日この頃です。

何はともあれ今年も無事に秋がやってまいりました。秋と言えば勿論、読書の秋です。皆様は日ごろ読書をしていますか?
昨今は、調べ物は携帯やパソコンであっという間に回答が導きだされ、読めても書けない漢字は、ひらがなを入力するだけで勝手に変換される時代です。
辞書も辞典も本棚に幅を利かせていた光景は、多くのご家庭で見なくなりました。調べ物をするにせよ、興味がある本が発刊されるにせよ、大まかなストーリーをもネットで情報があふれる時代ですから、本を読む機会が年々減ってきている世の中のようです。

また、読み物媒体が、紙ではなく、携帯やパソコンによる端末で読むようになり、ペーパーレスというエコな言葉に後押しされ、紙媒体の物は本だけでなく、書類に至るまで紙を使用しなくなりつつあるのです。
しかしアナログ世代の私は、だんぜん紙で文字を読むことを好みます。
なぜか、パソコンの文字を読んでいても内容が頭に入らないのです。それをいったん紙に印刷し、その紙を読むと内容がじっくり理解できるうえに、読みながら疑問や説明に合う類似事項などを連想させつつ、読む作業に加えて他の複数の思考が並行して頭で考えることが出来るのです。
これは紙でしか出来ない代物だとアナログ世代の代表(勝手にですが)と致しましてそう自負しております。紙の上の文字の力を強く訴えたい私です。

「飼い犬に腹を嚙まれる」

そこで過日、家内から読むように言われた書籍のご案内をいたします。決してその著者の回し者ではないのですが意外性に心躍り、このいずみに認めた経緯でございます。
その意外性と申しますのが、三笠宮家彬子女王の著書、「飼い犬に腹を嚙まれる」という文庫本でございます。
飼い犬に腹を嚙まれるという題から想像して、信頼をおいていた腹心の方の裏切り行為のドロドロ劇なのかと、いぶかし気に肩の力が入りましたが、実際は友人の犬を撫でていたら、自分が飼っている犬(女王本人は犬アレルギーのため普段は知人に預け、女王が頻繁に会いに行く状態だそうです)が嫉妬し、嚙みついてきたという、読んで字のごとくの内容でした。どの話も短い文脈ながら、くすっと笑い、小さく驚く話ばかりのエッセイ集だったのです。

追記しておきますが、飼い犬にかまれた彬子さまのお怪我は幸いにも大したことはなく、その犬をこよなくかわいがったそうです。
日ごろ皇室の方の生活を垣間見る機会のない私ども平民のため、数冊の彬子さまの著書内容をここでいくつかご披露したいと思います。

皇室の方はご存じと思いますが名字がございません。
民間から嫁がれた現皇后さまはご成婚に伴い名字を抹消する手続きをされたことは周知のことですが、皇室にお生まれになった彬子さまには、生まれながらにしてむろん名字がございません。
よって一般的に使われるお名前は彬子女王のみとなられ、学校の出席番号は安定の一番が多かったそうです。またお名前が彬子女王ですから運転免許証(ペーパードライバーで運転はなされないようです)の名前表記も彬子女王だそうです。

また漫画喫茶に行くことがご趣味のようで、会員証を作る際に身分証明書を提示しないといけませんが、運転免許証をお出しになられたので、漫画喫茶会員証も彬子女王と記載されているとのことです。
彬子女王という名前の記載も新鮮ですが、漫画喫茶に行くことが度肝を抜く驚きでした。

更に、お住まいお近くの和菓子屋巡りもご趣味とのことで、彬子さまとは気づかずにいたご店主は、後から彬子さまご本人であると気づくやいなや、とんでもなく恐縮されていたとのことですが、「そりゃそうでしょう。」と、本を読みながら私はつぶやいておりました。

ちなみに宮号として三笠宮とありますが、宮号は一般的に例えるなら屋号みたいなもので、その宮号には法律が付いてまわらないものとなり、免許証のような法的な物には三笠宮彬子とは表示できないとのことです。
それだけ一般人とは何から何まで違うものなのですね。

さて、本誌では皇室のうんちくをしたくて書き出したものではなく、彬子さまの著書に気になる事項が載っていたので、筆をとった次第でございます。

離合・りごう

唐突ですが、「離合・りごう」という言葉をご存じでしょうか。
むろん、多くの福岡県民は離合という言葉を知っていると思います。離合(りごう)とは、一般的には「離れることと合うこと」や「離れたり集まったりすること」を意味します。しかし、西日本、九州地方の中でもとりわけ福岡県では、運転中に「狭い道で車と車がすれ違うこと」を指す言葉として広く使われています。
この用法は、もともと鉄道用語で、駅などで列車が行き違うことを指す「離合」が自動車にも適用されて広まったとされています。交通用語として 狭い道で対向車とすれ違う際に「離合できない」「離合困難」といった形で使われているのです。
国土交通省や地方自治体の公式資料でも「離合困難箇所」のような表現が見られます。
地域性としては東日本では使われず、西日本、特に九州地方での方言的共通語として認識されていることが興味深いです。その離合について彬子さまがコラムを書かれておられるのです。

しかも研究肌の彬子さまはどの地域で使われているのか更に詳しく調査がしたくなり、徹底的に集計に取り組まれたのです。ご自身が皇族というお立場から、護衛の方が常に付かれておられます。

日ごろから常に、皇宮警察の護衛官が側衛としてお付きになられ、警視庁、各都道府県警の方もお側にお付きになられます。
その方たちのご出身地は、全国津々浦々から集まるので、データー収集にはもってこいです。
その環境を利用し、休憩の合間に彬子さまは「離合って知っておられますか?」と聞いてまわったそうです。そして何故にそのようなことを聞くかのネタバレをし、離合使用エリアの特定に努めていると申されたのでございます。

すると、護衛の方は地方から任期付で就かれる方が多く、任期終了後は地元警察などに戻ると、何と引き続きそのデーター集めにご協力してくださっていたとのことです。

結果、離合の使用エリアとして、広島から福岡で多くの方が使用し、島根、鳥取の日本海側の方は使用せず、四国地方に限っては愛媛のみ使用とあるのでした。元々は離合という言葉が鉄道用語なので、炭鉱の多い福岡で頻繁に使われ、それが車社会への移行と共に車でのすれ違いの様を表すようになったとのことでした。
福岡県民の皆様、皇室の彬子さまが福岡で馴染みの「離合・りごう」を解き明かしてくださいました。皇室とは縁もゆかりもございませんが、皇室の方が福岡の離合を知ってくださったことに伴に感謝感激いたしましょう。
今回は法話的な内容から外れまくりでしたがご了承ください。

苦笑合掌
輝空談