令和6年 花まつり【臨時】泉輪

こどもの日
 今年の桜は四月に入り咲き始めたことから、入進学の行事に満開を迎え、桜の色添えで、祝福ムードが更に喜びあふれる門出ではなかったでしょうか。桜が散ると今度はあっという間に、目にまばゆい新緑の季節です。そしてその時期のもう一つのお楽しみがゴールデンウィークの連休なのではないでしょうか。その連休には憲法記念日やみどりの日がありますが、もう一つがこどもの日です。多くの方になじみのあるこどもの日ではありますが、祝日として制定された理由を知らない方もいらっしゃることでしょう。まずは、こどもの日がどういう日なのかご紹介します。
 こどもの日が祝日となったのは、戦後間もない昭和二十三年(1948年)とのことです。「こどもの人格を大切にする」「こどもの幸せを願う」という趣旨を重んじて、祝日に制定されました。
また、こどもの日は「母親に感謝する日」でもあるとのことですが、これについてはあまり知られてはいません。母親に感謝する日は、母の日として五月の第二日曜日という風習が定着しているためです。しかし憲法上では、五月五日はお子さまのためだけの祝日ではなく、母子が健やかに暮らせるように、という思いが込められた祝日となっているようです。加えて、一般的に通常は「子供」と漢字を使いますが、「こどもの日」は「こども」と平仮名表記になっているのはなぜかと思われますか。「供」という漢字には「供え物」や「従者」という意味があり、神仏の供え物のようだとか、大人の手下のように感じるなどの意見があり、子どもにも人権があるという背景から、敬意を持ち、且つ、誠意を尽くして一緒に生きて行こうという意味を込めて「供」をやめるようになったそうです。さらに、漢字がまだ読めないこどもにも読めるように祝日の「こどもの日」は全てひらがなにする配慮がなされたと言われています。
 そして、五月五日といえば、端午の節句を思い浮かべる方も多いでしょう。古くから、端午の節句は、男の子が健康に育つように願う日です。現在も五月五日に合わせて、こいのぼりや五月人形など、端午の節句のお飾りをされるご家庭も多いと思われます。こどもの日も端午の節句も、たまたま、どちらも五月五日の同じ日にあるため、同じ意味を持つお祝いだと考えがちですが、それぞれは異なるお祝いです。こどもの日は、性別にかかわらず、お子さまの成長をお祝いする憲法で制定された日です。それに対し、端午の節句は、男の子の成長をお祝いする年中行事です。この端午の節句という習わしは、奈良時代に、中国より伝わったとされています。また中国の風習にのっとり、今でも当時中国から伝えられた食べ物を食べています。それは、ちまきです。ちまきは、古来より中国のお供えものでした。端午の節句でもお供えしていたため、こどもの日の行事食として日本でも定着していきました。
 柏餅(かしわもち)もちまきと同様に、端午の節句の風習行事食となっていますが、柏餅は歴史背景がちょっと違うようです。その昔、豊臣秀吉が小田原へ合戦に進発した時、白須賀宿近くの茶屋に立ち寄りました。この茶屋の老夫婦が餡の入った餅を秀吉公に振る舞ったところ、「これはうまい」と言って大そう喜ばれました。その後、秀吉公はこの合戦で北条氏を打ち破り、大阪へ帰る途中、再びここへ立ち寄り、勝ち戦に上機嫌だった秀吉は「これは大変縁起の良い餅じゃ。今よりこの餅を『勝和餅(かちわもち)』と申すべし」と言って、褒美の名を与えました。その後、「勝和餅」は宿場の名物として広まったと言われています。やがて江戸時代になると柏の木の葉で包まれてふるまわれるようになりました。柏の葉には抗菌、防腐作用があるといわれています。冷蔵庫がない時代に、餅が腐らないようにと用いられるようになりました。
 また、柏の木の葉は、新芽が出るまで古い葉が落ちないという植物上の特性から、新芽を子ども、古い葉を親に見立て、「家系が絶えない」さらには「子孫繁栄」と結びつけたわけです。そのため、柏の葉で巻いた柏餅は、縁起のいい食べ物として定着しました。
 しかし日本全国を見ますと柏の木が育つ地域は限られております。特に福岡県にはかしわの葉が自生していないため、その代替品としてがめ(サンキラ)の葉でつくったものが根づいていきます。「がめの葉饅頭」の「がめ」とは福岡県北部では亀やスッポンを「がめ」と呼び、その甲羅にそっくりな葉っぱであることから「がめの葉」と呼んでいることに由来します。また、がめの葉は、つるに生じる棘とひげ根、そして丸い葉っぱを持ち、それらが猿すらも引っかかるのでサルトリイバラと別名があるようです。
 さて、子どもの日の話に戻しますと、昭和二十九年(1954年)には、国際連合総会によって、十一月二十日に「世界こどもの日」が制定されます。世界こどもの日は、福祉の増進やこどもたちが相互理解を深める目的で制定されたものです。この国際法により様々な国でこどもの日が制定されていきました。こどもの日を制定した目的は各地域によってさまざまです。例えば、トルコは世界で最も早くこどもの日を制定した国といわれており、四月二十三日をこどもの日と定めています。中国やモンゴル、ベトナムやロシアなどが六月一日をこどもの日に制定しています。
 国や民族が違っても子どもを守ろうとしていることは大いに喜ばしいことです。日本でも月日は流れ、地域文化や風習が薄れていく昨今ですが、子どもの健やかなる成長を願う気持ちに変わりはありません。事件、事故、震災、世界に目を向けると、紛争や民族差別、子供を取り巻く環境は安全と言い切ることが出来なくなっているのが現状です。いつどこで何が起こるかわからない世の中だからこそ、毎日を懸命に生き、善き未来、善き地球を子どもたちにバトンタッチできるように大人が努めていかねばならないと思うのであります。

合掌
輝空談

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