令和4年 十夜【臨時】お寺豆知識

お寺豆知識・伏鉦(ふせがね)

 長男がお寺に携わるようになり、皆様のご自宅にお伺いさせて頂く場合を除き、本堂で法要が行われる際は、法要に必要な道具が自ずと二セット準備せねばならず、この度、新たに伏鉦(ふせがね)というものを用意致すこととなりました。
 伏鉦(ふせがね)は宗派により呼び名が違うようで、鉦鼓(しょうこ)、鉦鈷(しょうこ)、叩鉦(たたきがね)、宗味鉦吾(そうみしょうご)、宗味鉦鼓(そうみしょうこ)、などと呼び名がたくさんあるようですが、私どもの宗派では伏鉦(ふせがね)と呼んで使っております。
 形は平たいお椀を伏せたような形をしておりまして、原型は行人鉦吾(ぎょうにんしょうご)という、吊るして使う和楽器のようです。その和楽器は、京都の祇園祭の祭囃子や雅楽、歌舞伎、で使用されており、紐で吊り下げて使うもののようです。
 それをいつの時か、仏教に取り入れられ、仏具として定着したとのことです。吊るして使う和楽器の名残として、吊るす紐を通す耳が、現在の仏具の伏鉦(ふせがね)にもついております。
 実際には字のごとく伏せて置いて使用するので、ひもを通すことはないただの飾りのようにして形を残しております。それを畳台の上に置き、撞木(しゅもく)という木製のもので上からたたいて鳴らします。
 そしてここから本題なのですが、今まで使っていた古いものを長男が座る場所に置き、新しいものは住職の特権で私の定位置に置きました。皆様が本堂に座られておられても、今は新しい伏鉦(ふせがね)ですから、ちょっと光っておりますので、あれだなとお気づきになられるでしょう。
 その長男の伏鉦(ふせがね)の音色は、古いせいか「カンカンカンカン!」という金属音が致します。お経が上がりだし、ちょっと眠くなって、ウトウトとした際などは、それで目が覚めるような音です。
 それに対して、私が使い始めた新しい伏鉦(ふせがね)は「グゥワングゥワン」と何とも言えぬ癒しの優しい音がするのです。
 長男の場合、若い力強さゆえの叩き方であの音になるのでしょうが、私の場合は、ただ新しいというだけではなく、僧侶経験の熟練の技からなのだと自負しておりますが、何ともいい音がするのです。
 これから本堂の法要に参列される際は、その伏鉦(ふせがね)に思いを馳せ、そして音に仏性をお感じ下さればと思います。

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