2026年 盆【臨時】泉輪

お陰探し

 灼熱の太陽光が容赦なく私たちを襲ってきます。暑さと戯れ、夏を楽しんだのは随分昔のように感じております。皆様くれぐれもお体に留意してお過ごしください。
 さて、八月です。お寺目線ではお盆月です。暮れは坊主も走り回るから師走と名づけられましたが、実際のお寺はこの八月こそが師走という文字を使ってもいいのではないかと思う程、慌ただしくお参りをしております。しかしこれも修行です。一軒一軒お参りをさせて頂き、小時間ではございますが檀家様との語らいの中、ご相談事をお聞きしたり日常のご様子をお聞きしたり、その中で皆様との絆が深まる喜びを感じております。
 また、もう一方で八月といえばやはり終戦記念日です。多くの方のお命を昇天させてしまった嘆かわしい出来事の終わりを記した月でもあります。その終戦の大きな要因が原爆の投下です。その原爆の様子を芸術家の岡本太郎が「明日の神話」という壁画に描いております。その「明日の神話」という壁画はメキシコで製作され、その後、一度は行方が分からなくなりましたが、後に発見され、今はJR渋谷駅と私鉄を結ぶ通路に掲げられているそうです。
その壁画に描かれている様子は、原爆が炸裂する悲劇の瞬間が描かれております。
 しかしこの作品は単なる被害者の絵ではありません。人は残酷な惨劇さえも誇らかに乗り越えることができる、そしてその先にこそ『明日の神話』が生まれるのだ、という岡本太郎の強いメッセージが、岡本太郎記念館に記されております。長年の劣化により今まさに修復作業が行われているとのことで、もうすぐ完成を迎えようとしていると新聞に掲載されておりました。
 絵画の修復作業には「絵画復元師」という方が作業されております。絵画修復師とは、傷んだ絵画の状態を科学的に調査し、作品本来の価値や美しさを損なわないよう最小限の処置で保存・修復する専門職です。絵のクリーニングや破れ補修だけでなく、将来の劣化を防ぐ環境づくりや記録保存も重要な役割に含まれます。今まさに復元作業をされている岡本太郎の「明日の神話」という壁画は、ます刷毛で埃を取ることから始まるそうです。その埃は通行人の衣服の繊維が大半だそうです。そしてその集まった埃を見てみると、その年の流行の色が分かるというのですから驚きです。目にも見えない微細な繊維でさえも、集まれば色を帯び流行を表すのですから、細部に宿る物の力を見せつけられます。
 人は形あるものを認識し、直接感じるものを理解しがちです。食事の味わいは堪能するのに、農家の作付けには思いは及ばず、作物を育てる雨にも視野を広げることはありません。一つの物、一つの行い、一つの出会い、全てに限りない連鎖があって今に至った事実を時に考えるべきです。
 お盆を迎えます。今自分が生きていることでさえ、ご先祖様の計り知れない働きがあってこそです。心静かにご先祖様をお迎えし、ご供養すると共に、先人の遺徳を考えてみましょう。全員がそう行うことが出来るのなら、災いも争いもこの世から減っていくはずだと信じています。そう思い返させてくれたのは、名もなき見えないあの壁画についていた細い衣類繊維一本です。だとすれば繊維一本でさえお陰様なのでございます。

合掌輝空談

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